今週は、暗号資産史上、最も波乱を巻き起こした週でした。世界最大の取引所の1つであるFTXの将来は、現在疑問視されています。ここ2日間でネイティブのFTTトークンが 84%急落し、買収される仮契約が昨日の午後に打ち切られました。その結果、暗号資産価格は全体的に下落しています。全て3日間の低水準から戻りましたが、bitcoin(BTC)は月曜日から14%下落し、Ether(ETH)は17%下落し、Solana(SOL)は特に影響を受けており、43%下落しました。 市場は急速に変化しており、今すぐ短期から中期の予測を試みることは無意味です。長期的に見れば、Chainalysisは暗号資産はどんな嵐にも耐えられると確信しています。過去には多くの低迷がありましたが、貯蓄を維持し、日々のビジネスを行うために暗号資産に依存している新興市場の多くのユーザーを挙げれば、世界における業界の価値を再認識できるでしょう。しかし、当面の間、投資家は神経をとがらせ、市場がどのように反応しているのか、価格を超えた兆候を探していくでしょう。そこで、いくつかのチャートをまとめました。これは、オンチェーンデータに基づいて、暗号資産の世界で現在起こっていることについての当社の見解を概説したものです。 取引所への資金流入は安定している 中央管理型取引所は、ユーザーが暗号資産を取引して現金に換金する場所です。したがって、市場が極めて不安定なときには、投資家は取引所により多くの資金を移動させて、取引を通じて優位に立つか、法定通貨に移行することが予測されます。しかし、今のところ、10月26日から現在までの1時間あたりの純流入量を追跡しているグラフで分かるように、取引所への純流入量は大幅には増加していません。 11月7日、取引所への流入がわずかに増加し始めました。この日、ツイッター上で他の暗号資産会社によるFTTの大規模な売却があるという噂が流れ、FTXの健全性をめぐるパニックが拡大しました。しかし、純流出となっている時間帯も多くあります。総合的には、11月7日以降の取引所への流入は直前の日と比較して変動がありましたが、それ以前の数週間ほど変動はしませんでした。ボラティリティが増大している時、ましてや今目にしている極端なボラティリティの際に予測されるような大規模な流入は見られません。 投資家は安定性のために米ドルに移行しているのか? ボラティリティとパニックの時には、暗号資産ユーザーは法定通貨の安定性でシェルターを探すことが予測されます。これには2つの方法があり、米ドルのような法定通貨に固定されたステーブルコインの取引や、完全に清算して法定通貨と暗号資産を交換することが挙げられます。全体として、暗号資産の支持者は、後者よりも前者を見ている可能性があります。投資家がステーブルコインと交換する場合、一時的に保有資産の価値を維持させようとすることが多く、再取引の準備ができたときにはいつでも標準的な暗号資産に簡単に切り替えられるようにしておきます。一方で、彼らが法定通貨と交換した場合、それはより長い期間、あるいは永久に暗号資産から離れる意図を示す兆候かもしれません。以下で両方を見てみましょう。 以上、10月26日から現在までの資産タイプ別取引量の24時間ローリング平均を見てみました。ステーブルコインの取引量は11月7日まで同じ基本パターンで流れています。その時点で、FTXの状況が悪化し続ける中、ステーブルコインの取引量は11月10日の朝まで急増し、2週間の高値を越えました。データは、市場が不安定になるにつれて、多くの投資家が確かにステーブルコインに逃れたことを示唆しています。 しかし、法定通貨とのスワップはどうでしょうか?そのためには、オンチェーンの世界から一歩踏み出す必要があり、Kaikoが提供する取引所のオーダーブックのデータを見てみる必要があります。 この状況はステーブルコインと似ていますが、増加はそこまで顕著ではありません。ここでも、暗号資産から米ドルへの取引の安定した上昇が11月7日に始まり、11月8日には大幅な急増が続き、11月10日の午後6時(UTC)/午後1時(EST)には取引がピークに達し、11月10日の終わりまで上昇した水準を維持していることがわかります。それ以来、これらはほぼ通常のレベルに戻りました。パターンは、ステーブルコイン取引量で見られるものとほぼ同じですが、法定通貨へのスワップは、ユーザーが長期的に暗号資産ポジションから立ち去ることをより示しているかもしれません。 継続的な市場の監視 率直に言うと、FTXのような業界の大手の予想外の崩壊は、暗号資産にとって非常にマイナスの影響を及ぼしており、その結果として生じる市場の混乱はそれを一層強めています。しかし、暗号資産はこれまでこのような事象を乗り越え、より強くなり、新たな高みに達してきました。当社は資産価格が最終的に回復し、暗号資産が再び普及・成長を続けていくことを予測しています。今後も引き続き市場を注視し、今後の新たな市場の動きや兆候について可能な限りお伝えしていきます。 本資料は情報提供のみを目的としたものであり、法律、税務、財務、または投資に関するアドバイスを提供することを目的としたものではありません。本レポートの読者は、投資判断を行う前に自身のアドバイザーに相談する必要があります。 本レポートには、Chainalysis Inc. またはその関連企業(総称して「Chainalysis」)の管理下にない第三者のサイトへのリンクが含まれています。これらの情報へのアクセスは、Chainalysisがそのサイトの内容またはその運営者と関係を暗示、是認、承認または推奨していることを意味するものではありません。またChainalysisは、該当サイトに掲載されている製品、サービス、その他コンテンツに対して一切の責を負うものではありません。 Chainalysisは、本レポートにある情報の正確性、完全性、適時性、適合性および有効性を保証するものでも、本レポートのいかなる部分の誤り、脱落その他の不正確さに起因する請求にも責任を負うものでもありません。
2020年末に大きな伸びを示したビットコインやイーサリアム等の暗号資産は、2021年には史上最高値を更新するなど、非常に好調な1年となりました。それでは、暗号資産の価格上昇によって、最も恩恵を受けたのは誰でしょうか?Chainalysisは、昨年に続き今年も、地理的な観点からデータを分析し、国ごとの暗号資産の実現利益に関する比較を行いました。特に今回は、前年とは異なり、分析対象をビットコインに限定せず、Chainalysisが追跡する全ての暗号資産に関する実現利益へと範囲を拡大し、データを分析しました。 国別暗号資産利益の算出:Chainalysisの手法 暗号資産は、その分散化した特性により、地理的な分析を行うことが容易ではありません。しかし、Chainalysisが保有する取引データとウェブ・トラフィックデータを組み合わせることで、どの国が暗号資産のアクティビティに寄与しているかという点を、適切に見積もることが可能となります。 まず、Chainalysisが追跡している全ての暗号資産ビジネスを対象に、全暗号資産のブロックチェーン上のフローをマクロレベルで測定します。次に、引き出し資産および預け入れ資産の価値の差額合計を米ドルで算出することにより、それぞれの資産で得られた総利益を推計します。さらに、各取引所のウェブサイトにおいて各国が占めるウェブ・トラフィックの割合に基づいて、これらの利益(または損失)を国別に分配します。この方法は完璧なものとは言えません。理想的には、サービス単位ではなく、個人またはウォレット単位で利益を計算するやり方が考えられますが、今回のやり方では、特定の国の暗号資産ユーザーの総利益を合理的に見積もることができます。取引データとウェブ・トラフィックを組み合わせるという形態は、Chainalysisが毎年の「Global Crypto Adoption Index(世界暗号資産導入指標)」の計算に使用しているフレームワークと同じものです。 国別暗号資産実現利益(2021年) Chainalysisが追跡する暗号資産全体で見ると、全世界の投資家が手にした総実現利益は、2020年の325億ドルから、2021年には1,627億ドルへと拡大しています。以下のグラフは、このような利益獲得の上位50ヶ国を示したものです。 2021年 暗号資産総実現利益(推定) 米国が暗号資産から得た実現利益は470億ドルとなり、全体の中で大きな割合を占め、他を引き離しています。さらに、英国、ドイツ、日本、中国と続きます。しかし、昨年同様、暗号資産への全体的な投資パフォーマンスが、従来の経済発展指標の順位を上回っていると思われる国が多数見られます。 トルコのGDPランキングは、11位となる2兆7,000億ドルですが、暗号資産の実現利益は46億ドルで、6位にランクインしています。 ベトナムのGDPランキングは、25位となる1兆1,000億ドルですが、暗号資産の実現利益は27億ドルで、16位となっています。 ウクライナのGDPランキングは、40位の5,760億ドルですが、暗号資産の実現利益は28億ドルで、13位となっています。 チェコのGDランキングは、47位となる4,600億ドルですが、暗号資産の実現利益は19億ドルで、19位となっています。 ベネズエラのGDPランキングは、78位となる1,440億ドルですが、暗号資産の実現利益は11億ドルで、33位となっています。 このような傾向は、Chainalysisの「Geography of Cryptocurrency Report(暗号資産の地理学レポート)」の分析結果と一致しています。このレポートでは、送金や通貨切り下げへの対応策として暗号通貨を採用している新興市場国の数を調査しています。…