制裁

法執行機関によるダークネットマーケットの閉鎖に続き、OFACがHydraおよびロシアの取引所Garantexにも制裁措置

本日は、暗号資産犯罪との戦いにおける非常に重要な日となりました。米国の複数の法執行機関とドイツの連邦警察の協力によって、ロシアを拠点とした、収益で世界最大のダークネットマーケットと言われる「Hydra Market」が閉鎖に追い込まれました。

さらに同日、米国司法省はHydraの主要なオペレータの1人を告訴し、また米国財務省外国資産管理局 (OFAC) はHydraを制裁対象として、100を超える暗号資産のアドレスをSDNリストに追加しました。同時にOFACは、以前Chainalysisがマネーロンダリングにおける役割を調査した、ロシアの暗号資産取引所であるGarantexについても制裁対象としました。 

OFACが指定した全てのアドレスは、Chainalysis製品にて織別が付けられ、KYTをご利用のお客様には、設定に応じて「制裁対象」のアラート (sanctions alert) が表示されるようになります。 

以下で、HydraおよびGarantexの違法行為を分析し、またOFACがリストに掲載した制裁対象アドレスを共有します。

Hydraとは?

Hydraはロシア語圏だけを対象としているにも関わらず、ここ数年にわたり、突出して規模の大きいダークネットマーケットとなっています。

2021年、Hydraは全世界のダークネットマーケットの収益の75%に相当する、17億ドル相当の暗号資産を受け取っています。

Hydraはまた、その洗練された運営方法でも有名です。例えば、Uberに似た仕組みによって匿名の運び屋を手配して麻薬取引行ったり、買い手が人里離れた森に現金を埋め、売り手が後からそれを掘り出すといった、非接触型の手法で麻薬取引を行っています。Hydraは、ダークネットマーケットにおける取引の機密性やセキュリティを熟知しています。 

Hydraやそのベンダーは、厳密なコントロールと管理が行われているインフラストラクチャーに備えられた複数の事前承認済みサービスを使って、ベンダーやサイバー犯罪者が暗号資産をロシアルーブルに換金できる、マネーロンダリングサービスを提供しています。 

Hydraでマネーロンダリングサービスを提供するベンダーの例

実際に2020年、Hydraは他のダークネットマーケットや、盗難資金を保持したウォレット、ランサムウェアのオペレータ、詐欺などから、6億4,500万ドルに相当する暗号資産を受け取っています。

暗号資産を使った制裁回避に関する最近の懸念を考えれば、Hydraの閉鎖と制裁措置は正に最適なタイミングでの対応と言えます。このプラットフォームが提供するマネーロンダリングサービスが、制裁対象となっているロシアの企業や個人に便宜を供与している可能性があるからです。これらの対応に加え、米国の司法省は、ロシア在住のDmitry Olegovich Pavlovを、麻薬の流通とマネーロンダリングを目的にHydraの運営に関わった容疑で告訴しました。2015年以来、Pavlovは自身の会社であるPromservices Ltd.を通してHydraにWebホスティングサービスを提供するなど、市場の運営で中心的な役割を果たしてきました。 

ダークウェブ上で最大の違法サービスの1つを閉鎖に追い込んだことは、単なる制裁による影響に留まらず、法執行機関と暗号資産業界にとって大きな勝利と言えます。

Garantexとは?

Garantexはロシアに拠点を置く大規模な暗号資産取引所で、マネーロンダリングに関与していることから、以前、調査でも取り上げたことがあります。実際に、Chainalysisの「2022年暗号資産関連犯罪レポート」のマネーロンダリングの章でも取り上げたように、Garantexは、ロシアの金融の中心であるモスクワを拠点に暗号資産ビジネスを展開する、最大のサービスとなっています。 

2019年から2021年の間にGarantexへ送金された資金の31%、つまり6億4,500万ドルに相当する暗号資産は、犯罪に関連するアドレス、あるいはミキサーやKYC (本人確認) が不十分な取引所といった、リスクの高いサービスがホストするアドレスから送られたものでした。この中には、Finikoなど詐欺からの5,000万ドル超の送金、Hydraなどダークネットマーケットからの6,000万ドル超の送金、さらにNetWalkerなどランサムウェアからの1,000万ドル超の送金が含まれています。

Garantexなどのサービスは、サイバー犯罪者が不正に得た暗号資産を現金化する手段を提供することで、暗号資産ベースの犯罪の収益性を高め、またHydraのようにロシアの制裁対象に指定されることを回避する抜け道となります。OFACがGarantexを制裁対象とした結果、正当な暗号資産事業者は不正な取引所との取引を回避できるようになりました。

Chainalysisの無料制裁スクリーニングの活用

ウクライナの侵攻後のロシアに対する制裁の状況や、OFACのSDNリストにある制裁対象の個人や団体に紐づく暗号資産アドレスの増加を考えると、暗号資産事業者はこれまで以上に制裁に対して注目する必要があります。このような状況下、本日は、制裁対象のスクリーニングのためのAPIが、無料で利用可能になったことを発表するにふさわしい日となりました。APIを使用することで、サービスに接続する前に、アドレスが制裁対象に含まれていないかを自動的にチェックすることができるようになります。Chainalysisが提供するブロックチェーン上の制裁対象スクリーニングオラクルは、こちらから入手頂けます。この無料の制裁対象スクリーニングツールの新たな発表に関するブログもお読み頂けます。

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