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Twitterハッキング事件: 1週間が経過して分かったこと

2020年7月15日水曜日、ジョー・バイデン、バラク・オバマ、イーロン・マスクなど多くの有名人のTwitterアカウントが、Twitter内部ツールへのアクセスを奪取したハッカーによって乗っ取られました。その日の午後、ハッカーは有名人を騙り、「指定のアドレスにビットコインを送れば2倍にして返す」として、以下のスクリーンショットのようなメッセージを投稿しました。   結果として、この日の午後に仕掛けられた詐欺によって12万USドル相当の13.14BTCが詐取されました。ただし、後述するように、その入金額の一部はハッカー自身が関与したものとみられます。 この事件がソーシャルメディアで明らかになってから、Chainalysisは直ちに詐欺に関与するアドレスをラベル付けし、当社製品に反映させました。▼法執行機関が資金の流れを追跡しやすくしたり、▼暗号資産取引所の顧客が詐欺に資金を送ってしまうことや、犯人が取引所で盗んだ資金を現金化することを防げるようにしたりするためです。ブロックチェーン分析はこのような件では極めて重要です。ひいては、本件は、ビットコインのような暗号資産(仮想通貨)がもたらす資金移動を可視化することで、暗号資産を現金や他の従来の価値移転の方法よりも一層安全で透明性のあるものにできると言える、良い例となるでしょう。以下に、Twitter事件で起きたことと盗まれた資金の現況を解説します。 暗号資産詐欺やトラスト・トレーディングに関する基本情報 残念ながら、暗号資産に関わる詐欺は真新しいものではありません。弊社の2020 Crypto Crime Reportでも触れた通り、詐欺は暗号資産関連の犯罪の中で最も大きい割合を占めるカテゴリであり、2019年には全ての違法な取引の74%を占めていました。 暗号資産詐欺は2020年になっても引き続き大きな問題となっています。 今年の前期を振り返ると、詐欺で既に3.81億USドル相当が被害にあっています。2020年の詐欺による被害額は、PlusTokenといったポンジスキームが流行った2019年と比べ、ペースは落ちています。しかし、詐欺が暗号資産関連の犯罪の大きな割合を占めることには変わりありません。まだ報告されていない詐欺の解明や、詐欺に紐づくアドレスの識別、そうした活動のデータへの反映が進むにつれて、2020年前半期で分かっている詐欺による被害額は大きくなる可能性もあります。 また、今回のTwitterへのハッキングによって発生した詐欺も新しい手口ではありません。ソーシャルメディア上で有名人や会社を騙りユーザに倍返しにするといって送金させる、いわゆるトラスト・トレーディング(信用に基づく取引)詐欺は、ここ何年も続いています。   詐欺やそれに紐づく暗号資産アドレスを報告できるオープンソースデータベースであるCryptoScamDBによれば、トラスト・トレーディングは最も報告の多い詐欺であり、大きな利潤が得られる手口であるとのことです。ただ、今回のTwitter事件では、単に偽のアカウントを作るのでは無く、実際の有名人のアカウントを乗っ取ってそこから発信したという点が、他のトラスト・トレーディング詐欺との大きな違いです。 7月15日の発生事案と盗まれた資金の行方に関する分析 今回の詐欺は午後2時16分に、ハッカーが、暗号資産のトレーダーでありインフルエンサーとしても知られるAngeloBTCのアカウントを乗っ取り、取引のコツを伝えるためのTelegramグループに参加するために、Twitterのダイレクトメッセージ経由で送金をそそのかしたことから始まりました。その後4時間の間に、ハッカーは他の有名人やインフルエンサーのアカウント — 最初は暗号資産業界での有名人が標的だったが、後に一般にも知られる有名人が狙われた — を乗っ取り、指定のビットコインアドレスへの送金をそそのかすよう公にツイートをしました。…

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FATFによる12ヶ月レビュー: 着実な進展と一貫した対応の追求

訳注: FATFに参加するメンバーには単一の国だけでなく複数の国から構成される政策機関も含まれることから、原文では「国」を意味する”country”ではなく、「法律の管轄区域」を意味する”jurisdiction”という用語が使われています。日本語では、原則としてそれに従い「法域」と訳しています。 今週、Financial Action Task Force (FATF)は、12ヶ月という期間で、公共及び民間部門において、暗号資産関連の規制について施行すべきこと(FATF勧告)がどの程度進んでいるかについてのレポートを発表しました。このFATF勧告は、元々2019年6月に発表されており、FATFの200以上のメンバーやオブザーバーである法域に対して、以下のような規制を施行することを求めています。 取引所やホステッドウォレットなどを含む暗号資産サービスプロバイダ(Virtual Asset Service Provider: VASP)を免許制とすること 本人確認(Know Your Customer: KYC)やエンハンスドデューデリジェンスを徹底すること VASPにおいてトランザクションモニタリングによるリスクベースのAML/CFTコンプライアンスを義務付けること トラベルルールコンプライアンス − 1,000…

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調査・コンプライアンス対応に向けたDash/Zcashのサポート

調査ツールChainalysis Reactor、コンプライアンスツールChainalysis KYTにおいて、Dash及びZcashがサポートされるようになりました。これらはいわゆる「プライバシーコイン」と呼ばれるもので、プロトコルレベルでプライバシー機能が取り込まれている仮想通貨(暗号資産)です。現在これらの1日の取引額は、15億ドル相当となっています。 Chainalysisがどのようにプライバシーコインに対応するのか疑問に思う方もいるかもしれません。プライバシーコインはそもそも追跡を不可能にするために作られたのではないだろうかと。 実のところ、プライバシーコインだからといって追跡不能と言い切れるわけではありません。DashやZcashがどのような形でプライバシー機能を提供していて、それらが日々のトランザクションでどう使われているのかを考慮しないと、短絡的な見方になってしまいます。捜査官やコンプライアンス担当者は、利用者のプライバシーに関するニーズと業界のコンプライアンスに関するニーズのバランスをとりつつ、違法な活動について調査するわけですが、これがどのようにDashやZcashにも当てはめられるのかを本記事では解説します。 注: 通貨の種類としての名称を表す際には”Dash”や”Zcash”と表記しますが、実際に取引されるコイン(資金)そのものや通貨単位を指す場合には、それぞれ”DASH”、”ZEC”と表記します。 DashやZcashが提供するプライバシー そもそもプライバシーコインが「プライバシーコイン」とみなされる理由は何なのでしょうか。 未だに多くの人がビットコインのトランザクションは非公開であると思っているようですが、これは誤解です。トランザクションやアドレス、残高の情報は全て公開されており、永続的な台帳に記録されます。Chainalysisは、コンプライアンスや捜査上の目的のために、トランザクションを分析し、オープンソースインテリジェンスを用いてアドレスと実世界のエンティティの紐付けを行っています。(ただし、Chainalysisはサービスの特定は行うものの、個人のウォレットのラベリングは行いません) 一般的に、プライバシーコインは上記のようなプロセスを困難にする機能をもっているものと言えます。ビットコインなどの既存のブロックチェーンの上にプライバシー機能を導入することもできますが、プライバシーコインはそれをプロトコルレベルで実装している新規のブロックチェーンで稼働します。ここからDashとZcashが実装しているプライバシー機能について詳しくみていきましょう。 Dashのプライバシー機能 Dashはビットコインのコードフォーク(分岐)として2014年に誕生しました。PrivateSendと呼ばれるプライバシー機能こそがビットコインからの最も大きな変更点です。PrivateSendは実際にはCoinJoinプロトコルのブランド上の実装です。CoinJoinは、ビットコインのWasabi Walletなどのミキサーにみられる、資金源を分かりづらくする手法の一つです。ただし留意すべきこととして、PrivateSendを使うかどうかは任意であり、デフォルトではDashのトランザクションでこの機能は使われません。 前述のようなミキシングサービスの一般的な原理は、複数の利用者が資金を一つのトランザクションにまとめて送り、各利用者が送ったの同じ金額を新規のアドレスで受け取るというものです。これによって、インプットとアウトプットを結びつけることが困難になります。 DashのPrivateSendによるミキシングトランザクションの例: 0.1DASHの8つのインプットと0.1DASHの8つのアウトプットが含まれている。インプットの各送金元は、アウトプットのどれかを受け取る。 DashのPrivateSendトランザクションでは、ユーザの資金は、10、1、0.01、0.001DASHと決められた単位に分割されます。分割された資金は、上記0.1DASHの例のように同じ単位のお金だけ集めたミキシングのトランザクションに送られます。ユーザには結局同じ額が返ってくるのですが、お金は他のPrivate Sendのユーザのものと混ぜられています。このようなミキシングトランザクションのアウトプットでは、自分だけでなく他のユーザに送金することもできます。 PrivateSendと同様のミキシングを使ったトランザクションは、他の仮想通貨でも実現できます。つまり技術的には、Dashのプライバシー機能はビットコインで実現できること以上のものではなく、…

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日本における暗号資産(仮想通貨)の規制法についての要点

Looking for the English language version of our blog on Japan’s 2020 cryptocurrency regulation updates? Click here! 日本では2020年5月1日より、暗号資産(仮想通貨)に関する様々な法改正が施行されました。これによって、これまで未解決だった論点への法的回答や、暗号資産関連の業務で準拠すべきことが明確化されたため、日本で活発に暗号資産ビジネスを行う者にとっては歓迎すべきことでしょう。また、この法改正は暗号資産ビジネスの需要を鑑みると合理的であり、法的な位置付けの保証は、変化が目まぐるしいこの業界における最新の技術やビジネスモデルを支える要素となります。 以下に、日本における暗号資産関連の法規制の概要と今回改正された点をまとめます。 注: 2020年に施行された改正法以前では、いわゆる”cryptocurrency”を指して「仮想通貨」という用語が法的にも使われていましたが、2020年の改正法からは、「仮想通貨」に代わり「暗号資産」という用語が採用されています。本記事は、「仮想通貨」の用語が使われていた2016年の改正法についても触れていますが、ここでは混同を避けるために便宜上あえて「暗号資産」の用語に統一します。…